ヴィヴィアン佐藤×橋本ロマンス(パフォーマンスクリエイター)対談【本誌連載『ヴィヴィの部屋(Booth)』vol.7拡大版】

新宿在住のアーティスト・ヴィヴィアン佐藤さんが日頃から利用している歌舞伎町のインターネットカフェ&カプセル「Booth Net cafe & Capsule」。そこに、若手クリエイターやアーティストを招き、対談する本誌連載『ヴィヴィの部屋』の拡大版。
 
第7回目のゲストは、パフォーマンスクリエイターの橋本ロマンスさん。今回は、「Booth」の入口近くの通り「ゴジラロード」と、入口で撮影。バッチリ決まっています!
 
ヴィヴィアン佐藤(以下、ヴィ):今回のゲストは、私が審査員のひとりとして関わっている、『横浜ダンスコレクション2020』から、「コンペティションⅡ最優秀新人振付家賞」に輝いた、橋本ロマンスさんです。
 
橋本ロマンス(以下、橋):呼んでいただきありがとうございます! 私、20歳の頃からマダム・レジーヌさんの並木橋のお店に遊びに行っていて、ドラァグ・クイーン文化が好きで勉強していたので、ヴィヴィアンさんのお名前は存じ上げていました。
 
ヴィ:そうなのね(笑)。あなたのダンス・振り付けを見たとき、非常にユニークなボキャブラリーがあってテイストも洗練されていて。都会的でクラブっぽい感じ、明らかにほかの人と違うと思いました。受賞作品『サイクロン・クロニクル』では、『オズの魔法使い』の一節を取り上げた作品だったけど、それを現代風に読み解いているようにも思えて、もともとそういった物語に興味があるの? 最近の若い子はああいう発想、作り方はしないから。
 
橋:幼少の頃はミュージカルの子役をしていたので、物語が好きなのはそこから繋がっているのかなって思います。自分の内面吐露のような作品が私はあまり好きではなくて、それよりもコラージュ的、この映画のこのシーンとこれを組み合わせたときに実は見えてくる文脈とか、絵もそうですけど、全然関係ない絵同士を組み合わせるとココとココに関係性があるように見えるみたいな、そういう必然なのか偶然なのかわからない関係性みたいなもので謎謎を作って、それを自分で解いていく作業が好きです。
 
ヴィ:「生きること」や「日常・非日常」という言葉で勝手に語る人も多いけれど、そうじゃなくて自分がいままで触れてきた作品とか自分の価値観とか感性とかを形成したようなものを題材に、古典文学というか誰でも知っているようなものを今風に読み換える、自分なりに読むという作り方ですね。文脈を作って掘り下げていくというか解釈していく。
 
橋:そうですね。『イヴ』という作品では、『AKIRA』と『創世記』に登場するアダムとイヴの物語、その2つの文脈をコラージュしています。
 
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ヴィ:ダンスに限らずアートというのは、もともとは自然発生的に始まって、目的や役目があって、呪術的な意味合いもあったけれど、それがなくなってきて。それでもなんとなく私たちにはその本能が残っている。何か描きたいとか音楽をやってみたいとか。コンテンポラリーダンスも失われた本能の表れですよね。それをどういうふうに何をやるか、結局は作品のための作品になるかもしれないけれど、ひとつのコンテクスト(文脈)の問題ですよね。
 
橋:私は呪術的や儀式的というのはすごい腑に落ちる。自分でも意識していて、ダンサーにも本番前に「これは儀式だから」と言っています(笑)。私はコラージュ的に仮説を作る。その仮説を証明する儀式をいまからやるんだよって。ある意味でそれをやる前とやったあとで世界が変わっていないとやる意味がないというのはすごく思っています。
 
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ヴィ:ダンサーのヘアメイクも衣装もご自身でデザインしているのよね? イメージに一体感があって美しいです。
 
橋:はい。体の動き、照明、音楽、衣装、それぞれ同じレベルで存在していて、これは、私の尊敬する演出振付家のMIKIKOさんが使っていた言葉ですが、見終わったあとの“読後感”をどう感じてほしいかを考えて作っています。
 
ヴィ:過去の作品を見ても意識的なことがすごく伝わってくる。ダンスしかわかりませんっていうわけではなく、すべてに責任をもって作っているのよね。もう、ダンスというか、ある意味アートディレクションよね。
 
橋:いまは、ファッションショウのような大規模な、人に届けるためのアートディレクションにも興味があります。
 
ヴィ:総合的な意味でA・マックイーンのショウなど感動するよね。
 
橋:私は、グッチのショウもコンセプチュアルで好きです。
 
ヴィ:ファッションショウや都市のアートディレクションを、歌舞伎町を舞台にやってみるのも面白いかもね。
 
(撮影:高澤梨緒)
 
【取材場所】
お洒落で清潔感のある新宿のネットカフェ&カプセル
Net Cafe & Capsule Booth

 
■ヴィヴィアン佐藤
19××年生まれ。新宿区在住のアーティスト、映画評論家、ドラァグクイーン。新宿をはじめ、広島県尾道市、青森県七戸市では観光大志として町おこしも精力的に行なう。「殺しのヘッドドレス」と称し、ヘッドドレスのワークショップも定期開催。
https://twitter.com/viviennesato
★ヴィヴィアン佐藤の迷所巡礼★
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