【中原昌也JGweb連載】新宿~四谷で一時間考えたこと(1)
本誌連載「御苑人」出演をきっかけに、JG編集部のお手伝いをしていただくことになった、小説家・音楽家・映画評論家・イラストレーターの中原昌也さんが、のらりくらりと「一時間を新宿~四谷のどこかで過ごす」を実践!
「一時間」という中途半端な時間を潰すのは、簡単なようで、結構容易くない。
てっとり早く、その辺で小一時間眠ってしまうのもいいが、細かい眠りが逆に疲れるという人もいるだろうし、近所であれば自宅でくつろげるが、身近に公園があっても、人前で寝てしまうのには勇気がいる。
これが二時間とか三時間であれば、例えば映画を観たり…いや、開始時間との兼ね合いを考えると、交通事情も含めて上映時間+一時間弱くらいが前後には必要で、なかなかうまく行かないのが現実ではある。
それがどんな状況であれ、潰さねばならぬ一時間をどうやってやり過ごすのか、重要な課題である。安易に喫茶店で週刊誌を読むのもいい…しかし単なる一時間潰すのに、できる限り金銭は使いたくないもの。だって、自分の仕事を時給換算してコーヒー代より安かった場合、とても気が滅入るものだから。
とにかく新宿~四谷の中で、一文も使わず一時間を過ごすことに、飽くなき可能性を見い出してみよう。
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そもそも自分が、一時間という時間を本気で潰したいと思っているのか…単なるシュミレーションでなく、実際にそういった状況に置かれないと、真剣にはなれないものである。
だが、そうこうしているうちに、都合良く突然近所の公園に行きたくなった…たまたま、急に具合が悪くなって、横になりたい衝動に駆られたからだ。原因はわからない。確かに今朝起きてすぐ、喉が痛かった。
とりあえず風邪かと思い、新宿御苑の「マミー薬局」にて、適当に葛根湯と適当な滋養強壮剤(マカだの高麗人参だのが入った、適当に高めの)を買い、レジに行くと、お店の方が親切に「これじゃなくて、葛根湯とロイヤルゼリーをお湯でミックスしたやつの方が効くよ」とアドバイス。それにビタミン剤二錠をオマケに付けてくれた。速攻それを飲んだ。
薬が効いているのだか何だか、次第に気持ちが悪くなってきた。だから適当な公園で休みたい。どこかで横になりたくて仕方なかった。
そこで花園公園に赴き、どこか横になれる場所を探した。残念ながら、そのとき雨が降っていて、尻を濡らさずに座れるベンチは少なかった上に、昼飯時だったのもあって、すでに先に来た人々に大方の濡れていないベンチは、残念ながら占領されていたのである。