本誌の連載『レジェンドたちのターニングポイント』の拡大版。“ガトーショコラの最高峰”『特撰ガトーショコラ』を生み出した「ケンズカフェ東京」提供のもと、第一線で活躍するレジェンドたちに、その道を極めるようになったきっかけなどをインタビュー。第4回目は、歌手・女優の森公美子さん。
23歳の頃から18年間、新宿五丁目の厚生年金会館付近に住んでいたそうで、「まさに、この新宿に住んでいた毎日が私のターニングポイント」と、新宿エピソードを語ってくれました。
――新宿に住んでいた頃によく行っていた場所。
「GORI」（飲み屋）には週3回行ってたし、二丁目に友だちもたくさんいました。ボディメンテナンスは近くの整体院、ボディファッションは伊勢丹。大きいサイズがそろっているので（笑）。いまも、馴染みの店といえば新宿に戻ってくることが多いです。
「いいとも」をやっていたときは、ゲストが急遽来れなくなったと、ディレクターに呼ばれて自転車で行くこともありました（笑）。収録の帰りには、アルタ裏の「アカシア」や大好きな「桂花ラーメン」に行きました。
「池林房」（新宿三丁目）や「吉亀寿司」（新宿五丁目）にもよく行ったし、五丁目のジャズバーではクリスマスシーズンになるとお客さんに「1曲どうですか？」って言って、ドリフの合唱隊の衣装っぽいのを着てクリスマスソングを歌ったりもしました（笑）。
嫌なことがあったときは新宿御苑にも行きました。気持ちがリセットされる。
五丁目は徒歩圏内で求めているものがそろう“ピポットタウン”です。
――二丁目の行きつけ。
ショーパブ“コン”です。私の体調が悪いときにママが自宅までおかゆを作りにきてくれたこともあって、2階に住んでいたけど、外から「くみこ！くみこ！いる？」って呼んできて、体調悪いからこっちは声出しづらいのに（笑）。ママもそうですけど、“新宿ゲイ組合”の人たちが本当に優しくしてくれました。
――ゴールデン街や荒木町といった飲み屋街に行くことは？
行きますよ。ゴールデン街だと当時は「深夜＋1」や「仔ぶた」。荒木町は最近多いかな。主人が吉田拓郎さんが好きで、ファンが集まるお店に一緒に行っています。
――新宿での印象的な出来事。
忘れられないのが、コマ劇場の稽古場に自転車で向かってるとき、私が一時期中学教諭をしていた頃のツッパリ生徒に歌舞伎町で遭遇したときのこと。キャバクラかバーの前を掃除している人から「もりー！」って呼ばれて振り向くとその生徒だった。
「ちょっと飲んで行けよ」って、彼が開店前の店内で上手にコーヒーを淹れてくれて。彼は地元に帰るか悩んでいたから、「応援しているよ」って背中を押していたけど、3回ほど会ったある日、「俺に近付かない方がいい。俺も頑張るから先生も頑張れ」って、翌週にはいなくなってた。涙したし、当時の歌舞伎町は特殊で、いろいろな物語があると痛感しました。
――歌舞伎町の彼もそうかもしれませんが、森さんの応援は誰かのターニングポイントになっているかもしれませんね。
森公美子という人間がやっと認められたのは新宿にいたから。新宿にいなかったらきっとまだまだ自分の夢には遠くて、いろんな人に頼って出会いもなくて。新宿はいろんな意味で誰かに出会えるまち。私の人生の過渡期でいうと、新宿に住んでいた時期はベクトルにするとグンと高い。楽しい思い出しかないし、「一度は住みなよ新宿」って思います（笑）。また戻ってきたいです。
■森公美子
1959年宮城県生まれ。’82年『修道女アンジェリカ』でオペラデビュー。以降、舞台をはじめバラエティやドラマで活躍。’15年『天使にラブ・ソングを～シスター・アクト～』で『第40回菊田一夫演劇賞』演劇賞を受賞。
■Information
出演ミュージカル
『GHOST』
【期間】3月5日（金）～23日（火）
【場所】日比谷シアタークリエ
映画『ゴースト／ニューヨークの幻』のミュージカル版。2018年日本初演の再演。森さんはオダ・メイ役。
公式サイト
『Les Misérables（レ・ミゼラブル』
【期間】2021年5月25日（火）～7月26日（月）
プレビュー公演5月21日（金）～5月24日（月）
【場所】帝国劇場
1985年のロンドン初演を皮切りに、 日本では’87年の初演から30年以上、上演回数3336回を誇る“ミュージカルの金字塔”。マダム・テナルディエ役で出演。
公式サイト
ケンズカフェ東京
https://kenscafe.jp/
（撮影：蔦野裕）
