ヴィヴィアン佐藤×枝優花(映画監督)対談【本誌連載『ヴィヴィの部屋(Booth)』vol.1拡大版】(後編)
アーティストのヴィヴィアン佐藤さんと映画監督の枝優花(えだゆうか)さんが対談した、『ジェイジー』最新号(Vol.101)の新連載『ヴィヴィの部屋』vo.1の拡大版。
前編では、枝さんの監督作『少女邂逅』が上映された新宿武蔵野館でのエピソードや日本映画に対する思いを語っていただきました。後編では、『少女邂逅』の内容について掘り下げます。
■「タランチュラを20匹飼っていたの(笑)」(ヴィヴィアンさん)
ヴィヴィアン佐藤(以下、ヴィ):タイトルの『少女邂逅』の“邂逅”は“蚕”と掛けているとか……。
枝優花(以下、枝):ダジャレです(笑)。高校生のときに群馬県の富岡製糸場が世界遺産になって、地元が大きく盛り上がって。蚕のことは小中学校の教科書や「上毛かるた」(群馬県の郷土かるた)を通じて多少知ってはいましたが、あとから詳しく調べてみたら、繭から羽付きの成虫になっても飛ぶことができず、口がないので食事もできずに死んでしまうと分かり、その生態に驚きました。
ヴィ:蚕の生態って本当に不思議なのよね。不思議な生態といえば、私、タランチュラを20匹飼ってたことがあるの。
枝:タランチュラを20匹、すごい!
ヴィ:タランチュラは脱皮しながら成長していくんだけど、最終生態までオスかメスか分からないの。しかも、交尾のあとにメスがオスを食べてしまうこともあるのよ。
枝:本当に不思議ですね。
ヴィ:どうしてタランチュラの話をしたかっていうと、『少女邂逅』で主人公のミユリが糸を辿っていくとそこには紬(つむぎ)がいる、というお話が、迷宮の中で蜘蛛の糸を辿っていくアリアドーネの神話と似ているからなの。
枝:糸を辿っていくとどうなるんですか?
ヴィ:辿っていくと迷宮から脱出できるのよ。迷宮の中には、牛の頭を持ち、体は人間の怪物がいて、そこから逃げて脱出するために蜘蛛の糸を辿っていくの。これがアリアドーネの蜘蛛の糸の神話。だから、糸は困難から脱出するときのメタファーのようなものとも言えるわね。
枝:そんな神話があるなんて、初めて知りました! 『少女邂逅』の蚕の糸と似ている点もあって面白いですね。
■「映画ならではの、“この画を見るためだけにもう1回来たい”と思えるようなものを作りたい」(枝さん)
ヴィ:あと、映画を見てどうしても気になったのが、冒頭で紬が履いていたパンツを脱いでミユリにあげるシーン。あの行為はどういう意味なのかしら?
枝:この映画は外からは見えない主人公ふたりの気持ちをやりとりしていく物語なので、「普段は隠しているもの=下着」を共有するシーンを冒頭に入れることで、これから映画の中で起こることを暗に示しています。あとは、ふたりの最初の出会いで「何だこいつは」と誰もが思うようなことをやらせたかったんです。それで長いこと考えて、「パンツをあげたらやばいよね」という結論に至りました(笑)。YouTubeの予告動画でそのシーンを見た海外の視聴者の方たちは「日本にはパンツを配る文化があるのか」なんてスレッドを立てていて。そこで白熱の議論も起きてびっくりしました。
ヴィ:そんな文化があったら、外国の人もびっくりよね(笑)。最後に、今後はどんな作品を作っていこうと思っていますか?
枝:去年は来た仕事をすべて引き受けていたら、考える暇がなくて疲れてきてしまって。そんな中で思ったのは、これからは本能的にやりたいことや、撮りたいことを積極的に実行していこうということ。日本映画ではあまり見たことのないような映画を作りたいという話をプロデューサーさんとしていて、それを打ち出していければと思っています。物語の善し悪しに限らず、映画ならではの「この画を見るためだけにもう1回来たい」と思えるようなものを作りたいですね。
映画『少女邂逅』はBlu-ray&DVD発売中でレンタルでの視聴も可能。また、『少女邂逅』のアナザーストーリーとなるWEBドラマの特別版映画『放課後ソーダ日和 特別版』は全国の映画館にて公開中です。日本映画の新たな可能性を見出そうと挑戦する25歳の映画監督、枝優花さん。今後の活躍も要チェックです!
(撮影:高澤梨緒)
■ヴィヴィアン佐藤
19××年生まれ。新宿区在住のアーティスト、映画評論家、ドラァグクイーン。新宿をはじめ、広島県尾道市、青森県七戸市では観光大志として町おこしも精力的に行なう。「殺しのヘッドドレス」と称し、ヘッドドレスのワークショップも定期開催。
https://twitter.com/viviennesato
■枝優花(えだゆうか)
1994年生まれ。映画監督、写真家。2018年、初の長編監督作『少女邂逅』が話題に。STU48やindigo la EndのMV監督やスチール撮影、雑誌『装苑』『ViVi』などのスチール撮影も行なうなど多方面で活躍。『装苑』では連載ももっている。
https://twitter.com/edmm32
【取材場所】
DVD鑑賞にもおすすめ!
お洒落で清潔感のある新宿のネットカフェ&カプセル
Net Cafe & Capsule Booth
【関連記事】
ヴィヴィアン佐藤の迷所巡礼
https://jgweb.sakura.ne.jp/cms/contents/vivi/page/3
https://jgweb.sakura.ne.jp/cms/30250
https://jgweb.sakura.ne.jp/cms/29539