【第五番】いまなお残る紅葉川の流れ~あけぼの橋通り商店街~

本誌で異彩を放つ連載「迷所巡礼」のウェブ版。新宿~四谷歴ウン十年のヴィヴィアン佐藤さんが、毎月その嗅覚をたよりに、エリア内の不思議な“迷所”の歴史をたどっていきます。今回は、かつてフジテレビのお膝元として賑わった、あけぼの橋商店街。80年代後半、“ギョーカイくん”が遊んでいたこの辺りは、その昔、紅葉川が流れていたとか。いまでもこの場所で、耳を澄ましてみると……。さあ、いきましょう、今月の“迷所”へご案内

元フジテレビがあった曙橋。91年のバブル崩壊を阻止すべく、タイムマシンで当時の政治に介入するというユニークなSF映画『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』(07年)では、当時ギョーカイの隆盛を極めていた曙橋周辺が出て来るわ。

この辺りの靖国通りは、かつて紅葉川が流れていた場所。いまでも、谷を走る様な地形を見ることが出来るの。ほら、靖国通り(紅葉川)を挟んで幾つかの支流の跡(暗渠)を見つけることができるのだけれど、そのひとつが今の「あけぼの橋通り商店街」ってワケ。

フジテレビが曙橋にあったのは97年まで。いまでもこの辺りには、製作会社やスタジオなどが残っているわね。専門的には「ジク谷」と呼ばれる谷。

その、暗渠である「あけぼの橋通り商店街」を入っていくと、さらに小さな谷や坂が、左右に存在しているわね。

安養寺の裏手にある安養寺坂や、フジテレビ跡地へ繋がっている念仏坂、靖国通りを挟んで北側には、永井荷風にして「ものすごい坂」と云わしめた暗闇坂もあって、まるでパリの一角の様なセツモードセミナーに繋がっていたり……。

こんなふうに、谷や坂が多い場所は――例えば、四谷の荒木町もそうだけれど、今でも隠れ家的なレストランや料亭があったり、魅力的な街でもあるわよね。
80年代のギョーカイくんたちも、この谷や坂を歩きながら、こぞって新しいお店を開拓していたのでしょうね、フフフ。

商店街を女子医大の方へ進んでいく途中には、小さな小さな弁財天もあるの。普段何気なく歩いていたら、気づかずに通り過ぎてしまうほどの、本当に小さな弁財天。

この連載でも以前に歌舞伎町や荒木町の弁財天を紹介したけれど(本誌vol.59、本誌vol.60)、七福神では唯一の女性の神様である弁財天は、「財(お金)」と「才(音楽や芸術)」にご利益があって、日本全国で池や沼、湖、離島など「水」に関する場所に多く祀ってあるのよ。

そういう部分でも、この辺りが、かつて水辺だった名残が見られるわね。付け加えておくと、この辺りの地名である河田町の「河田」は、田地や湿地帯を表す言葉。

いまでも、この弁天様の境内で耳を澄ますと、地下にたくさんの水が溢れ出ている音が聞こえるわ。それが曙橋商店街の底を流れ、靖国通りの底へと続いていくのね……。
歌舞伎町、荒木町、大久保辺りなど、むかしの新宿区は沼地や湿地帯だった場所が多くて、とてもウェットだったのよ。

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