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教科書だけでは学べなかった戦争の歴史。観ることで知る、知ることで残す。『三度の海峡』をご紹介

5/24(土)~6/1(日)の間、紀伊国屋サザンシアターで上演されている青年劇場公演『三たびの海峡』。

帚木蓬生の小説「三たびの海峡」(新潮文庫刊)を原作とし、脚本・演出シライケイタで舞台化された作品を、戦争を知らない世代のひとりとして観劇してきました。

時代背景

1930年代末から1945年までは、日本へ渡る朝鮮人労働者がもっとも増加した時期です。
自らの意思で日本へやってきた人ばかりではありません。
無理やり日本へ連れてこられ、強制的に働かされた人もいました。

約束された労働時間、食事、生活環境、それらが守られない中、過酷な環境での労働を強いられた彼ら。
その生活はまるで地獄のようでした。

「歯向かえば、どうなるかわからない」そんな環境のなか極限状態で働き、そのままそこで亡くなった人も少なくありません。

たとえ生き残って、終戦を迎えたとしてもその苦しみは続きます。

人生が続く限り、強制的に日本で働かされた時の辛く苦しい記憶や経験は、彼らを苦しめ続けました。

物語は1944年に日本へ強制連行された18歳の河時根(ハー・シグン)が生きた世界、そして解放(終戦)から47年、1992年の時根が生きる世界、その二つの軸で進んでいきます。

あらすじ

1992年時根は韓国で経営するオフィスで徐鎮撤(ソ・ジンチョル)と再会します。
鎮撤が時根を訪ねてきた理由はひとつ。
時根たちが働かされていた炭鉱跡地と、当時ともに働き、再び祖国の地を踏むことなく死んでいった仲間たちが眠るボタ山を壊して再開発を図る動きがあることを伝えるためでした。

そして、その再開発を図っているのは山本三次。
時根たちが地獄のような生活を送ることになった炭鉱ですべてを指揮していた労務士です。

これらを聞いた時根は、もう二度と踏むことはないと思っていた日本の地を再び踏むことを決意します。
山本の思惑を阻止するために。歴史をなかったことにしないために。

日本へ戻り再会した人々、初めて知る事実、思い起こされる記憶、残さなければいけないもの。

三たびの海峡、その先で時根が下した最後の決断とは。

戦争を知らない世代として

戦後80年の現代。戦争について知る人は年々減ってきています。
戦争を知らない今の世代のわたしたち。

そんな戦争に関して細かい知識がない人も没入でき、教科だけでは学べなかった、「知らなければいけない歴史」を『三たびの海峡』では知ることができます。

歴史は「残そう」という人がいないと残りません。
残らなかった歴史はなかったことになってしまいます。
だからこそ『三たびの海峡』のような歴史を知る機会を逃してはいけないと、強く感じさせられました。

この作品を通して歴史を知ることができるのはもちろんですが、物語としても非常に魅力的です。

青年劇場の実力派俳優陣が作り出す臨場感あるシーンの数々。

夜、時根が韓国から日本へ海峡を渡るために乗った船の甲板で海を見つめるシーンでは、複雑な心情を表すような真っ暗で果てしない海が。
炭鉱でのシーンでは狭く息が詰まり、今にも崩れ出しそうな不安定な坑道が。
俳優の演技と考え抜かれた舞台装置によって、舞台の上に様々な光景を生み出していきます。

また、シリアスなテーマながらも、節々に散りばめられた、登場人物たちのキャラクターが活きるコミカルな脚本・演出もありました。

いつの間にか生きた時代も性別も、なにもかも違う時根に感情移入し、怒りを、愛を、感じることができる作品です。

5/24(土)~6/1(日)の間、紀伊国屋サザンシアターで上演されています。
是非足を運んでみてください。

公演情報

青年劇場公演『三たびの海峡』
原作    :帚木蓬生「三たびの海峡」(新潮文庫刊)
脚本・演出 :シライケイタ
公演会場  :紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
公演時期  :2025年5月24日(土)~6月1日(日)
チケット料金:一般=5,800円
       (前売料金=5,500円)  
       30歳以下=3,300円
       (前売料金=3,000円)
その他詳細は青年劇場公式HPよりご確認ください。
チケットサイト:
https://www.seinengekijo.co.jp/ticket/mitabinokaikyou/index.html
青年劇場公式HP:
https://www.seinengekijo.co.jp/

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