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ヴィヴィアン佐藤×成宮アイコ(朗読詩人)対談【本誌連載『ヴィヴィの部屋(Booth)』vol.5拡大版】(後編)

アーティストのヴィヴィアン佐藤さんと朗読詩人の成宮アイコさんが対談した、『ジェイジー』最新号(Vol.105)の連載『ヴィヴィの部屋』vo.5の拡大版後編。
 
■言葉じゃない世界
 
ヴィヴィアン佐藤(以下、ヴィ):学生時代に東京と行き来していたときはどうしてたの?
 
成宮アイコ(以下、成宮):声のこともあって、言葉を発したくないし言葉がとにかく嫌いだったので、歌詞のない曲を聴いていて、ずっとテクノのクラブに行ってたんです。
 
ヴィ:どういうところに行ってたの?
 
成宮:マニアックラブとかですね。
 
ヴィ:アフターアワーズ?
 
成宮:そう! アフターアワーズ!
 
ヴィ:私も行ってたよ!
 
成宮:えー! 当時はIDチェックがゆるくて入れたんですけど、別のところからはしごして、マニアックのアフターに行くっていました。YO*CさんとSHINKAWAさんが大好きで。
 
ヴィ:結構バッキバキな日に行ってたのね。アフターアワーズっているだけで感動的なのよね。
 
成宮:朝方でみんな疲れて帰っていくから、だんだん人が少なくなって(笑)。
 
ヴィ:最後まで生き残った人たち同士が集まる(笑)。
 
成宮:同じ日にいたかもしれないですね。そういうときも、釜ヶ崎にいるときのように言葉の説明はいらないし、私は私っていう事実だけになって。それが私のメンタルにはちょうど良かったんです。この間は、スクエアプッシャーの来日を見に行ってきたんですよ。
 
ヴィ:WARP?
 
成宮:『WXAXRXP (ワープサーティー)』っていうWARPの30周年イベントです! 明け方の、日本人DJ Seihoさんがめちゃくちゃかっこよかったです。
 
ヴィ:2017年のフジロックにエイフェックス・ツインが来たよね? 私、エイフェックス・ツインの来日ライブで初めて行けなかったの。
 
成宮:2000年のフジロックにリチャード・D・ジェームスが来たときは行きました?
 
ヴィ:行った行った!
 
成宮:えー! 私もいました!
 
ヴィ:あんまり好きで、ロンドンまでイベントに行ったこともある(笑)。ところで、ギャスパー・ノエの新作映画観た?
 
成宮:『CLIMAX』ですよね、まだ観てないんです。『レクイエム・フォー・ドリーム』を観たときに鬱を呼び起こしかけて、そういう感覚に似ている映画かなって心配で……。
 
ヴィ:確かに似てるかも。でもあれヤバかったよ、私、『キネマ旬報』で映画評を書いてるんだけど「星5」! ノンストップなんだけど、いちばんヤバいところに『Window Licker』(エイフェックス・ツイン)が使われてるの。
 
成宮:えー、じゃあ絶対観ます! 初めてインタビューでWARPの話しました(笑)。
 
ヴィ:こういうのは言葉じゃない世界ですよね。いや、言葉といえば言葉ではあるのだけど。
 
成宮:言語としての言葉があまり好きではなくて、というかしっくりこなくて。だから自分がやっていることと、自分が助けられてきた趣味は別物なんです。ジャンルとしてみると、詩や文章は言葉っていうことになるから別物になってしまう。私の中では同じで地続きなんですけど。
 
ヴィ:とくにクラブは、VJも音も一瞬きり、プレイは一回きり。そのときの思いが湧いては消え、湧いては消えっていう体験をするじゃないですか。自分だけが思っていることだけれどきっとみんなも思っているっていう感覚。成宮さんの『伝説にならないで』を読んで、一人称の「わたし」が「わたしたち」に溶けてく気がしたんだけど、それにちょっと似ているのかもね。「わたしはわたしたちである」っていう。
 
成宮:そうなんです、一人称が溶けていくって感じてもらえるの嬉しいです。私の中では、取り囲む世界の全部が繋がっているけれど、ジャンルとなると別物にされてしまうからうまく説明ができなくて。
 
ヴィ:成宮さんの詩集は音楽に近いのかもね。
 
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■自分と他人の境界線
 
成宮:詩集のプロフィールにも書いているんですけど、私、風俗サイトの写メ日記が文学としてすごく好きで。偽名だし虚像と思う人もいるかもしれないけれど、人間性だけは垣間見えるというか。
 
ヴィ:それもひとつの面だもんね。
 
成宮:最初に話していたいびつな多面体で言ったら一番小さい面かもしれないけれど、やっぱり多面の一部分なんですよ。でも、それが広くない部分だと本当のことじゃないみたいに扱われることがある。
 
ヴィ:何が本当? って思う人もいるけれど、全部本当なんだよね。
 
成宮:そう、全部本当。わかりにくい面のことほど、自分の気持ちに通じることがあるんです。
 
ヴィ:私、演劇より映画が好きなの。演劇って毎日出来が違うでしょ? 違うから面白いっていうけれど、私は違うと困るんですよ。演劇の面白さは共犯関係みたいに言われるけれど、それが面倒くさくて、私は覗き見のほうが好きなの。映画って、10年前と5年前と昨日観たときで違うじゃない? 映画自体は変わらないのに。でも、昨日と今日で24時間あれば自分は違ってくる。その24時間には膨大な差があって、見え方が変わっていくの。
 
成宮:こっちは受ける側でいるけれど、変わる部分はありますよね。私も変わらないこととか、明確で具体的なものが好きです。たとえば、「黄色いふわふわ」って言われたら、ひよこを思う人もいれば明石焼も思う人もいるけれど、「青くて四角い灰皿」って言ったらみんなだいたい同じようなものを想像できる。でも無のときもあれば、青っていうところから何かを思い出すこともあって。映画も同じで、同じものを観たけれど、観た人それぞれが別のことを考えるというのが好きです。
 
ヴィ:そうね、自分ですら他人になっていくことがあるのよね。
 
成宮:自分と他人の境界線ってとても興味があります。だから事件のルポとかドキュメンタリーも好きです。
 
ヴィ:私は、できるだけ映画を“誤読”しようと思いながら見るようにしていて。作り手は自己批評的に責任を持って作るべきだけれど、作り手が偉いわけじゃないから。観てる側こそ、「何を思ったのか」っていうクリエイティブなことが求められるのかも。監督や作り手が思ってもみない感想が出てきたり。そういた違う文脈を見つけていくことが楽しいのよね。
 
(撮影:高澤梨緒)
 
【取材場所】
年末年始におすすめ!
お洒落で清潔感のある新宿のネットカフェ&カプセル
Net Cafe & Capsule Booth

 
■ヴィヴィアン佐藤
19××年生まれ。新宿区在住のアーティスト、映画評論家、ドラァグクイーン。新宿をはじめ、広島県尾道市、青森県七戸市では観光大志として町おこしも精力的に行なう。「殺しのヘッドドレス」と称し、ヘッドドレスのワークショップも定期開催。
https://twitter.com/viviennesato
★ヴィヴィアン佐藤の迷所巡礼★
https://jgweb.sakura.ne.jp/cms/contents/vivi/page/3
 
【バックナンバー】
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