六車俊治監督×脚本家・吉田順×俳優・大久保鷹×外波山文明による豪華対談! 2月27日(土)~3月4日(金)公開・映画『SHADOW KIDS』

JG最新号(vol.83)「シンタメ」でも紹介している通り、「ゴールデン街や花園神社を舞台にした映画『SHADOW KIDS』が2月27日(土)よりシネマート新宿で公開されます!
 
本作は、主人公の小学生・タカシが、友人の虎太郎とともに、失踪した母を探しに歌舞伎町に迷い込み、摩訶不思議な夜の街を駆け抜けるアクションストーリー。
 
公開に先立ち、六車俊治監督、脚本家の吉田順さん、俳優の大久保鷹さん、劇団「椿組」主宰の外波山文明さんという豪華メンバーにお話を伺いました! 映画の見どころから街への思い、花園神社でのテント芝居の裏話など、貴重なお話が盛りだくさんです!
(以下、話し手部分は敬称略)
 
──今回、新宿ゴールデン街や花園神社を映画の舞台に選んだきっかけは?
六車:ずっとやりたいと思っていたんですよ。僕は2010年に歌舞伎町で撮影したテレビドラマ『クロヒョウ 龍が如く新章』を監督していますが、映画でもこの街を撮りたいと思っていた。というのも、学生時代、大久保鷹さんがご活躍されていた花園神社の元祖・紅テント芝居をよく観に行っていて、この街には馴染みと憧れのような思いがあったんです。
 
──大久保さんは唐十郎氏主宰の「状況劇場」ご出身、外波山さんは花園神社でテント芝居を続けて今年で30周年ですね。
外波山:僕も「状況劇場」のお芝居を観ていた者で、1967年、当時20歳で上京した時は、花園神社での旗揚げ公演『腰巻お仙』を観覧しましたよ。
大久保:旗揚げした頃は、花園神社で芝居をやるなんて、かつてないことでね。「河原乞食として神社で芝居やりたいんだけど、なら芸能の神様を祀る花園神社しかねえじゃねえか?」って、宮司さんや氏子さんたちに話をして、なんとか芝居が打てるようになった。テントは、ホールでやるのとは全然違うんだよな。たとえば地方でやる時に、台風で電線が切れたら、舞台横で役者やお客さんに自転車漕いでもらって照明あてたりね。皆必死になってやる楽しみがあったね。
六車:すごいバイタリティですね(笑)。一種の、お祭りですよね。「状況劇場」の方々は、皆がそのエネルギーに引き寄せられるような、新宿界隈のお祭りの主人公だったと思うんです。
 
──その花園神社の隣にあるゴールデン街にも、お二人は古くから馴染みがあると思います。
外波山:昔はよく喧嘩があって、警官がとっ捕まえにやってきたら、当事者たちは知らん顔して飲んでるんだよね、頭から血を流しながら(笑)。そんな光景をよく見ましたね。
大久保:喧嘩しても、人のせいにして逃げたりせず、相手ととことん言い合う奴が多かった。人と人とが本気で向き合える街だったよな。いまでこそ、喧嘩はないけど、観光客や外国人のお客も増えてきて、独特の混沌とした雰囲気がある。そこで出会った人とどう向き合っていけるのかっていうのが、この作品には出てる気がするね。言葉でいえば、ピュア。ここは純粋っていうものを試されている街だと思うよ。にしても最近は、客層に変なおっさんたちがいなくなってきたよな。
外波山:それはもう、変なおっさんたちが年取ったからだよ(笑)。うち(クラクラ)はまだ、若い人含めて変な連中が多いほうだけどね(笑)。38年店をやっていて思うのは、時代とともに様変わりする街だけど、案外、カウンターと酒と乾きもんしかないよ、ぐらいのほうが長続きするんですよね。
 
──本作は、小学生が飲み屋街を疾走するという斬新な設定ですが、そこに込められた意図と、見どころも教えてください。
吉田:主人公の少年二人は、心に傷を負わざるを得ない境遇なんですが、その傷を癒やすものが、この街にあるんじゃないかと。表向きの環境や学校教育の中では救えない部分ですね。歌舞伎町一帯には、どこか魔界的な雰囲気と、不思議な包容力があると思うんです。
六車:そうですね。僕は長崎出身の田舎者ですが、新宿にいると、騒がしい街のはずなのに、なぜか落ち着くんです。たとえば田舎の森や川原で転がって癒される体験が、この大都会の真ん中、ゴールデン街の中にある気がする。
外波山:神社でテント芝居をやっている時も、そこに魔界の世界があるなぁと感じるんだよね。夏の開演19時頃はまだ明るくて、終演する頃は暗くなっている。昼と夜の境目で人さらいにあうような感覚がある。それは、もとは売春婦の生活が根付いていたゴールデン街にもあって。そんな、本来立ち寄れない場所にもしも紛れ込んだら、子どもは何を感じるのか?という。
六車:出てくる大人は怪物のような奇妙なキャラクターばかりですが、そうした人とふれあい、警官に追われたりして、傷だらけになりながらも、二人の少年が成長していく様を見ていただきたいですね。
吉田:新宿大ガード近くの墓地のシーンも見どころです。お墓は、生者と死者が出会う、命のバトンを繋ぐような象徴的な場所。ゴールデン街もそうですが、人々がいきいきとして、命が溢れせめぎあっているような空気を感じてほしいです。
 
──最後に、どんな方々に観てもらいたいですか?
六車:子どもたち、とくに主人公と同世代である小学生に観てほしいですね。人間がたくさん集まってできている街の、人間ありきの物語を。
吉田:そうですね。もちろん大人も。世の中の動きや、人との関わりで受ける痛みなど、より客観的に捉えながら共感できる部分が多いと思うので、ぜひ。
外波山:普通ならこうしなさいよ、という教育映画ではなく、こうした生き方もあるんじゃないか、という提示がある映画ですよね。
大久保:別に世代を分けずに“すべての人に観てほしい”でいいんじゃない? いわゆるこれを、“積極的曖昧”といいます(笑)。
六車:ええ、もう地球上すべての人に観ていただきたいです(笑)。いや、本当に、子どもから大人まで、また、とくに新宿に馴染みがある人なら大いに楽しめる、魔術的な魅力満載の内容となっています!
 
新宿ゴールデン街の全面協力のもと実現したロケシーンと、名優たちのアクションが光る本作。劇場での公開が待ち遠しいですね!
 
劇場映画『SHADOW KIDS』 
【公開日】2月27日(土)~3月4日(金)(上映時間は劇場に問い合わせ)
【会場】シネマート新宿
監督:六車俊治
脚本:吉田順、六車俊治
企画・製作:影山塾
配給協力:アーク・フィルムズ
出演:神田健栄、島田隆誠、大久保鷹、大方斐紗子、外羽山文明、井田國彦ほか
 
六車俊治(むぐるま・しゅんじ)
1969年長崎県生まれ。慶應義塾大学卒業後、テレビ朝日に入社。ドラマなどのディレクターを経て、2004年に内村光良主演の『恋人はスナイパー THE MOVIE』で映画監督デビュー。現在はフリーの映画監督・テレビドラマ演出家・脚本家として活動中。最新作は映画『リトルパフォーマー 風の鼓動』3月公開。
 
吉田順(よしだ・じゅん)
1970年千葉県生まれ。慶応義塾大学卒業後、演技者として活躍。演出家、脚本家、格闘技ライターを経て、テレビ制作会社に勤務。現在はフリーとして映像作品の脚本を手がける。著書に『浅田真央 さらなる高みへ』(学研教育出版)、『東日本大震災 伝えなければならない100の物語』(共著・学研教育出版)、最新作に『スポーツ感動物語 アスリートの原点 全6巻』(共著・学研プラス)がある。
 
大久保鷹(おおくぼ・たか
1943年新潟県生まれ。ワンダー・プロ所属。唐十郎主催の劇団「状況劇場」に入団し、65年、有楽町駅前での街頭劇でデビュー。花園神社境内や新宿駅西口での紅テント公演にも参加し、60年~70年代のアングラ演劇シーンで活躍。同劇団の一時代を築いた。“伝説の怪優”と呼ばれ、劇団「唐組」、劇団「新宿梁山泊」などの舞台公演にも参加している。
 
外波山文明(とばやま・ぶんめい)
1947年長野県生まれ。劇団「椿組」主宰。ジェイ・クリップ所属(業務提携)。バー「クラクラ」を経営する新宿ゴールデン街では、商業組合理事長も務める。67年演劇集団「変身」入団後、街頭劇、野外劇を経て71年「はみだし劇場」を旗揚げし、86年には花園神社にて野外劇を開始。現在に至るまでプロデュース公演、他団への客演、テレビなど多数の方面で活躍。
 
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